がん遺伝子治療 CDC6shRNA治療 ドクター講演

CDC6shRNA治療のメカニズムをドクターが丁寧に解説してくださいましたので、わかりやすく要約しました。


数年来、追跡取材してきたガンの遺伝子治療(ガンの辞典では「CDC6shRNA治療」という呼び名で記事掲載:以下当記事では『CDC6shRNA治療』と表記)の講演会が東京(赤坂 ホテルニューオータニ)で開催されました。当日は、医師、患者さんおよびご家族、関係者合わせて約120名が参加。米国カリフォルニア在住の開発者であるLuoFeng博士も駆けつけ、世界初の一般向け講演会となりました。

CDC6ガン遺伝子治療CDC6ガン遺伝子治療
会場は東京赤坂のホテルニューオータニ

 

講演会では当治療に携わる臨床医の先生、治療を受けた患者さんの代表者、開発者の方がお話をされました。今までわかりにくかったCDC6shRNA治療のメカニズムをドクターが丁寧に解説してくださいましたので、この治療法に関連する部分を要約しました。

CDC6ガン遺伝子治療

ドクターから患者さんまで約120名が参加

 


【演者:阿保義久先生(北青山Dクリニックがん遺伝子治療センター院長)

阿保義久先生CDC6ガン遺伝子治療
一般の人にもわかりやすく阿保先生はお話してくださいました

私はある方の紹介で、日本に在住されている
CDC6shRNA治療の共同開発者とお会いする機会を頂きました。そのとき、スキルス胃ガンが完全に消失した患者さんのことを伺ったのです。診断画像を見せてもらいましたが、驚くほどの改善例でした。

CDC6ガン遺伝子治療 スキルス胃ガン例

専門のドクターも驚いたスキルス胃ガン消失例

 

現在日本では毎年60〜70万人がガンと診断され、そのうち約34万人の方が亡くなられています。ざっと1日に1000人が亡くなっている計算になります。早期の段階で外科的治療(手術)を受けることで治癒するガンもありますが、何らかの治療を受けても2人に1人が再発しています。特に膵臓、胆管、肺、食道などのガンの治療成績は芳しくありません。また、患者さんと医師の治療に対する意識のギャップが大きい、という問題もあります。東京大学病院の放射線科が実施したアンケートによると、末期ガンと宣告された患者さんのうち80%の人が最後まで治療を希望しています。一方、最後まで治療を提供したいと思っている医師は20%に過ぎない、という結果になっています。この差が社会問題化している「ガン難民」発生の温床の一つといえます。

 

スキルス胃ガンの症例を目の当たりにした私は、この遺伝子治療が厳しい状況にあるガン患者さんにとって希望の持てる治療法となる予感を抱きました。しかしながら、先端的といわれる遺伝子治療も臨床ではまだ手探りです。ただガンというのは遺伝子の変異が発端となって起こる病気であることは間違いありません。ガン細胞の6つの特性=ー律的増殖能力、¬妓汰殖、7豐豹契検↓ず挧死回避、チ殖停止命令回避、浸潤・転移能力=にも遺伝子が関わっています。これら6つのいずれかに作用するだけでも、ガンを抑制することが可能です。

 

つまり、できてしまったガン細胞を殺傷する治療より、ガン細胞の分子生物学的特性をターゲットにする治療のほうが『本質的な治療』なのです。さらに、副作用が少なく患者さんの身体への負担が小さい》《ガン細胞のみがもつ物質をターゲット》《その物質はガン細胞の生命維持に必須》《治療での反応はガン細胞にのみ発生》《ガン細胞数に対して有効分子が数的に圧倒的に有利であること》という条件をクリアできれば、臨床において理想的なガンの遺伝子治療といえます。

 

CDC6shRNA治療に出会ったとき、私はそのような可能性を感じたのです。しかし実際にこの治療を実施するのであれば、しっかりとした裏付けを取る必要があります。そこで私は既に発表されていたCDC6ノックダウン理論に関する論文、学会発表などを精読し、治療例の考察、薬剤のガン病巣部への送達技法の考案などと並行して、アメリカ在住のLuoFeng博士とメールでやり取りし納得したうえで、治療を行うことにしたのです。

CDC6ガン遺伝子治療CDC6ガン遺伝子治療

CDC6がたくさん発現するとガンが増えます

 

CDC6は細胞を増殖させるために発現するタンパクで、細胞周期を調節する働きがあります。正常細胞では1回の細胞周期(細胞分裂サイクル)に1度だけ(G1期)発現します。ところがガン細胞においてはCDC6が全細胞周期に現れてしまいます。つまり正常細胞では検出が難しいくらいのCDC6が、ガン細胞では大量に存在するのです。このCDC6の大量発現によって、無限増殖、ガン抑制遺伝子不活性化などが起こり、ガンを進行させる一因となります。当治療はこのガン増殖に関与するCDC6を遺伝子操作でノックダウン(消去)させ、ガンの増殖停止、ガン細胞の老化およびアポトーシス(自殺)を誘導します。

 

このような高度な分子レベルの作用を誘導するにあたり、重要なポイントが3つあります。

 

1.どのようにしてCDC6をノックダウン(消去)させるのか?
2.ノックダウンさせる物質をどのようにガン細胞内に送り込むのか?
3.ガン細胞だけで反応させるにはどうするのか?

CDC6ガン遺伝子治療

いかにガン細胞だけCDC6をノックダウン(消失)させるか?

 

私は臨床医なので詳細な技術については解説できませんが、最先端の遺伝子工学を採り入れ製剤されていると聞きました。簡単に申しますと、1はRNA干渉という技法を用いてノックダウンさせます。2はレンチウイルスをリコンビナント(組み換え)したものベクター(運び屋)にしています。3はガン細胞に特異的に存在する酵素(hTERTプロモーター)を利用しています。非常に精密かつ高度な技術を用いることで、正常細胞に影響を与えずガン細胞のみでCDC6をノックダウンさせることが可能になりました。

 

当治療の今後の課題ですが、治療適応の決定、ターゲットであるCDC6の発現確認法の特定、必要投薬量・送達法などの治療基準の確定などが挙げられます。現段階での薬剤の血中残存時間は1〜2時間となっています。そのため体表面に近いガン病巣には直接注入しますが、内部の臓器・器官に対しては栄養血管を通して可能な限り至近距離から投与するのが効果的なので、カテーテルを用いた治療になります。開発者であるLuoFeng博士は、薬剤残存時間の延長、ベクター(運び屋)の改良など精力的に行っていると伺っています。臨床と開発が情報を共有することで更なる製剤の改良につながれば、ガン患者さんにとって福音となることでしょう。そのために私も精進してまいりたいと思っています。

 

ご清聴ありがとうございました。


◆北青山Dクリニック がん遺伝子治療センターの公式サイトはこちら!

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阿保義久先生
イケメンの阿保先生(左)と濃い面の編集長


CDC6shRNA治療 乳ガン体験者の黒木美恵さんも患者さんの代表として体験談お話しされました。
(黒木さんの取材記事はこちら!)

遺伝子治療 乳ガン体験者 黒木美恵遺伝子治療 乳ガン体験者 黒木美恵

会うたびに若返っている黒木さん(お世辞抜き!)

 


【編集長感想】

阿保先生は東京大学医学部のご出身。ご専門は腫瘍外科、血管外科で、カテーテルを用いた治療では日本有数の技術をお持ちです。ほぼ全身の病巣近辺にカテーテルや先端技術を用いて薬剤を挿入できます。
CDC6shRNA治療が阿保先生と出会えたことは、本治療が日本国内で発展するにあたり大きな転機になったと思います。

 

以下、当講演会を主催された「NPO法人 がん先端遺伝子治療情報センター」発足記念誌への寄稿文を掲載します。

 

CDC6shRNA治療と出会って」 ガンの辞典 編集長 小澤康敏

 

CDC6shRNA治療に出会ったのは2007年が明けて間も無くでした。この治療によってガンの病巣が消失した画像を見せられたものの、その当時はまだ雲をつかむような話に思え、俄かに信じることはできませんでした。ガンの遺伝子に作用する治療・・・たまたまじゃないか・・・。興味はそそられるものの、それより先に進む気にはなれませんでした。

 

半年経ったある日、突然電話が鳴りました。「中国の青島医科大学付属病院で行われているCDC6shRNA治療を今週末に見学に来ませんか?」というお誘いでした。出発は4日後です。そんな急に言われても・・・とスケジュールを睨みながら困惑します。一方で、「直に臨床の現場を見るまたとないチャンスだ!」という思いが胸の奥底から突き上げてきました。何故かはわかりませんが、この治療法の不思議な力を感じたのです。

 

青島では中国人の患者さんたちと同じホテルに宿泊し、病院に同行し、一緒に食事をしました。広い中国、2000キロ以上離れた地から娘さんの運転で青島にやってきた肺ガンの男性は、ひどい咳き込みで苦しそう。すでに胸水も溜まっています。北京からさらに2時間程の所から来られた胃ガンの患者さんは、よく喋る明るい方ですが、顔色は萎えた黄色で食欲がありません。食道ガンで余命2ヶ月と宣告された男性もいました。

 

CDC6shRNA治療の責任者であるドクターは、この治療の速効性を評価されています。(2009年再訪時にインタビュー)「時間的に余裕のない患者さんでも、患者さんに負担のかかる副作用がほとんどなく、短期間で体調が改善することは患者さんやご家族にとって大きな励みになる。なかには顕かなガンの縮小が画像で確認できるケースもある」と語られました。

 

前述の患者さんたちも数回の治療で大きな変化が見られました。肺ガンの方は予定していた胸水の処置をする必要がなくなりました。胃ガンの男性は、食欲が出始め顔の黄色みも薄れピンク色の部分も見られます。食道ガンの方は、生まれ変わったくらいに体調が良いと嬉しそうに大きな水餃子をパクパク頬張っていました。この様子を目の当たりにして私は、「この薬はまるで細胞を蘇生するようだ」と開発者の方に言ったものです。

 

CDC6shRNA治療は外来通院でも可能ですが、青島医科大学付属病院では入院設備、カテーテル設備などがあり、より効果的な治療方法を採用できていました。早く日本でもこのような治療体制が整わないだろうかと待ち望んでおりました。この度NPO法人発足により、国内での治療環境が整い、CDC6shRNA治療の有効活用が進展することを大いに期待いたします。